夕焼けの向こうの国

人生の中で、師と仰いで尊敬する方にたくさん出会える機会はあるけれど、学生として過ごした日々での一番最後の私の師匠、川村たかし先生が永眠されました
今日は告別式に参列させていただくため、奈良まで行ってきました

川村先生は、優れた教育者であり、児童文学作家としてもご活躍されました

川村ゼミで創作を教えて頂いていたときも、先生はけっして頭ごなしに否定されたり批判されたりするようなことはなく
「僕はこう思うけど、あなたがたはどう思いますか」と、まず私たちに問いかけられます
みんながいろんな意見を出し合っていくうちに、答えがなんとなく見つかってきたとき、先生がずばっと「それや」と明確な答えと解説を言い添えてくださるのです

それぞれの人の意見を聞くということは、とても大切なことだけど、人は自分の意見を聞いてもらいたいという気持ちのほうがどうしても勝ってしまうような気がします
自分の考えをきちんと持っていたとしても、まずはほかの人の考えを聞くということ、それから自分の考えと照らし合わせてみるということ

また、先生はよく、創作するときの大切な心構えとして「感情的に書くな、客観的な目を持って写実せよ」と仰ってました

ほんとうの感動は、読んだ文字から与えられるものではなく、文章を読んだ人がそこから何かを感じとって自分のものにしたときにこそ生まれるものだと、
教えてくださったのは、川村先生でした


告別式には、たくさんの方がいらっしゃっていて、先生の懐の深さに今更ながらに感銘を受けました
葬儀場の広いホールでは間に合わず、通路にまで椅子が並べられたけれど、立ったまま参列させて頂くかたちになった方もたくさんいらっしゃいました
私たちも、ホールの片隅に立ち、お見送りをさせて頂きました

本当にたくさんの方がいらっしゃったので、お棺に花を手向けて、最期のお別れを差し上げるのは、ご家族やご親族の方々とごく身近な方のみだと思って、出棺のときにお別れをと思っていたら
先生の奥様が「教え子の方がたにも」と、優しいご配慮をくださったおかげで、最期のお別れを差し上げることができました
立派なのに、ご家族の優しさと思いやりと、先生の魅力にあふれた、アットホームで心が温まるようなお葬式でした

たくさんの人から手向けられた花々で、先生は「花に埋もれて」眠れる姫のようでした(王子というべき?)
お花の置き場所に迷いつつ、お棺の蓋がしまるかな、と思わず心配してしまったくらい
きっと先生は「あんたらなあ、は、花で(この時点ですでに吹き出してる)、お棺がしまらへんがな〜」と、あはあは笑ってみえたのではないかなあ

ユーモアにあふれた方でした

ゼミのときも、幾度となく爆笑して、みんなで呼吸困難になりかけたことを、懐かしく思い出しました


どうぞ安らかにお眠りください


そして、夕焼けの向こうの国で、またいつかお会いできる日まで
サヨナラ