きゅー

鹿の瞳は
物言いたげ

そのくせ
控えめにも
見えたり

しっかりとした
意思をもっている
ようでもあり

心の奥底で
こっそり
かくしておくつもりで
いたことも

あの瞳に
みつめられると

かくしきれない
思いがする

そんな瞳を
もつひとのことを

ふと
思い出していた
一日

あの日かかってきた
電話を
一生忘れない

いまも思い出す
おだやかな顔

数日まえに
二人きりになった夜
話した別れの挨拶が
こんなにもはやく
現実になると思わなかった

でも
あのときわたしは
そんなこと言わないでって
言えなかった

瞳の中に
これは
永訣の挨拶だと
みえていたから